大切なものは

第 22 話


ルルーシュを狙っている者がいる。
マリアンヌの時は外部から侵入したテロリストによる犯行という結論になったが、今回はそれでは通らない。どちらの事件も共通しているのは、犯人の情報が一切ないことだ。何者かが手を回し、事実を隠蔽している。
あるいは、ギアスか。
犯人はためらうこと無く銃を使い、刃物を振り回す。
マリアンヌとルルーシュだけで考えれば、標的を直接その手で傷つけることを好む相手だと思われるが、毒殺の可能性は捨てきれない。第一、その犯人にだけ注意を払えばいいわけではない。命を狙う者はいくらでもいるだろう。
とはいえ、他の者たちはまだジュリアス=ルルーシュとは知らない。知るのは、眼と手を奪った犯人。それも、他のラウンズたちでさえ、スザクでさえジュリアスがルルーシュだと知らない頃に知り、行動を起こせるもの。犯人をラウンズであるスザクに押し付けられる立場。間違いなく、皇帝の傍にいる誰かが首謀者だ。
スザクは理解していないが、ビスマルクはすぐにそれを察した。
そんな人物なら、食事に混入させる事は簡単だろう。
どうすれば安全を確保できるのだろうと悩むビスマルクに、簡単な話だとルルーシュは言った。

「人を探して欲しい」
「人探し、ですか」
「篠崎咲世子という。エリア11にいるイレブンだ。アッシュフォードに匿われている間俺たちの世話役をしていた女性で、ナナリーの護衛としての訓練も詰んでいた。彼女なら信用できる」

食材は彼女に買ってきてもらえばいい。
ルルーシュは片手で通帳を器用に開いた。
軍資金としてだろうか、驚くような金額が振り込まれている。

「咲世子さんなら、スザクも信用できるだろ?」

視線だけスザクに向けると、スザクは一瞬言葉に詰まった。
すでにギアスで操っている可能性はある。
いや、ナナリーの世話役だった咲世子さんに危険な命令はしていないだろう。するとしたら、ナナリーのための命令だ。なら、大丈夫なはずだ。

「・・・咲世子さんなら」
「決まりだ。ビスマルク、すまないが彼女を探して欲しい」
「かしこまりました」
「それまでの間は、自炊する。材料は、スザク。お前が買いに行ってくれ」
「僕が?」
「お前なら1回でかなりの量を持って帰れるだろう?幸い冷蔵庫が大きいからな。保存食を含め買いに行けば、かなりもつだろう」

この部屋の道具はすでに毒がないことは確認済みだ。
ラウンズであるスザクは何度も買い物に出かけられないが、今信用できるのはスザクしかいない。できるだけ食材を買い込んで、咲世子が見つかるまで食いつなぐしか無いだろう。

「でも」
「その間は、ラウンズの控室にでもいればいいんだろう?」
「・・・うん」
「そういうわけだ。それと、通販の届け先だが」
「それは私のところで・・・・ですが、ルルーシュ様。通販など使用されなくても」
「悪いが、出入りの業者も信用出来ない。この部屋の中で使うものは、通常の流通ルートのものを使用する。一番いいのは自分で買いに行くことだが・・・」
「それは・・・」
「自分の立場はわかっている」
「はっ」

ラウンズとして人目につくものは、それなりのクラスのものでなければならない。本来なら、私物含め全て一流のものを使うべきだ。それだけの資金も手にある。だが、『通信販売を利用する』その行為を正当化する必要がある。ビスマルクは中を検品などしないだろう。ビスマルクの私物なら、検査もそこまでされないし、内容もそこまで気にされない。何より、毒や爆発物を仕掛けられる可能性が限りなく低い。
このルートは今のうちに確保しておく必要がある。

「では私はこれで」
「ああ、たすかった。ありがとう」
「いえ、また何かありましたら」

一礼し、ビスマルクは部屋を後にした。


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皇族が通販とは・・・庶民向けの安価な品物と庶民の生活に毒されて・・・と思いながらもルルーシュくんに言われるがまま協力してしまうビスマルク。
マリアンヌの子供には弱い。

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